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Welcome to Yuzaki Lab
    慶應義塾大学医学部柚崎研(神経生理学)では「神経活動や環境の変化が、どのようにして記憶・学習を引き起こし、どのように神経回路網そのものを変化させるのか」というテーマに沿って研究を行っています。詳しくはこちら
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2018

介在神経細胞のNMDA受容体が小脳LTDに必須である(J Physiol)2018.11.2.
Kono M, Kakegawa W, Yoshida K, Yuzaki M. Interneuronal NMDA receptors regulate long-term depression and motor learning in the cerebellum.  J Physiol in press, 2018.
記憶の基礎過程として考えられているLTPやLTDの発現にはNMDA型グルタミン酸受容体が必須であることがよく知られています。これまでの研究で、運動学習に重要な小脳においても、NMDA受容体がLTDやLTPの発現に必要であることが示されていました。しかし成熟後には小脳プルキンエ細胞にはほとんどNMDA受容体が発現しないため、一体、どの細胞に発現するNMDA受容体がどのようにLTP/LTDを制御するのかは長年の謎でした。この論文では、プルキンエ細胞、顆粒細胞、介在神経細胞それぞれにおいてNMDA受容体遺伝子を欠損させることによってこの問題に挑みました。結局、介在神経細胞に発現するNMDA受容体がLTDおよび小脳依存的な眼球運動学習に必須であることが明らかになりました。LTPには関与しません。大学院生の河野さんの学位論文です。

C1qL4はBAI3を介して筋芽細胞の融合を制御する(Nature Commun)2018.10.30.
Hamoud N, Tran V, Aimi T, Kakegawa W, Lahaie S, Thibault MP, Pelletier A, Wong GW, Kim IS, Kania A, Yuzaki M, Bouvier M, Côté JF. Spatiotemporal regulation of the GPCR activity of BAI3 by C1qL4 and Stabilin-2 controls myoblast fusion.  Nat Commun 9:4470, 2018.
筋線維は筋芽細胞の融合によって作られます。筋芽細胞の融合は発達期のみでなく損傷後の筋再生時にも起き、厳密に制御されています。私たちがこれまでに小脳の登上線維の刈り込みと強化を制御する分子として発見したBAI3が、筋線維では筋芽細胞の融合に関与することがこれまでに示されていましたが、その詳細な分子機構はよく分かっていませんでした。この論文では、C1qL4がBAI3を抑制し、Stabilin-2が活性化することで筋芽細胞の融合を時空間的に制御することを明らかにしました。小脳ではC1qL1-BAI3がシナプス形成を、筋ではC1qL4-BAI3が筋形成を制御することが極めて興味深いと思います。カナダのJean-François Côté研究室との共同研究として、慶應に短期来られたViviane Tranさんを大学院生の会見君と掛川准教授がお世話しました。

Caveolin-1はカベオラ非依存的なN-カドヘリンとL1の輸送を制御することによって発達期の神経細胞の成熟を促進する(iScience)2018.8.21.
Shikanai M, Nishimura YV, Sakurai M, Nabeshima YI, Yuzaki M, Kawauchi T. Caveolin-1 Promotes Early Neuronal Maturation via Caveolae-Independent Trafficking of N-Cadherin and L1.  iScience 28;7:53-67, 2018.
神経細胞の樹状突起の発達過程はin vitroでは完全に再現されません。例えば幼若型の神経突起はin vivoではいったん刈り込まれますが、この現象はin vitroでは見られずそのメカニズムはよく分かっていません。本研究では子宮内電気穿孔法を行ってin vivoにおける神経突起発達過程を観察することによって、caveolin-1がN-カドヘリンとL1のエンドサイトーシスを介して樹状突起の発達過程を制御することを明らかにしました。この過程にはカベオラは関与していません。川内さんが鹿内さんとともに柚崎研に居られた時の仕事です。

新しい光遺伝学ツールPhotonSABERによってLTDと運動学習との因果関係が明らかに(Neuron)2018.08.17.
Wataru Kakegawa, Akira Katoh, Sakae Narumi, Eriko Miura, Junko Motohashi, Akiyo Takahashi, Kazuhisa Kohda, Yugo Fukazawa, **Michisuke Yuzaki, *Shinji Matsuda.  Optogenetic Control of Synaptic AMPA Receptor Endocytosis Reveals Roles of LTD in Motor Learning. Neuron 99:985-998, 2018.*Co-corresponding authors; **Lead Author

Access the recommendation on F1000Prime神経活動依存的に起きるシナプス後部でのAMPA受容体のエンドサイトーシスが、長期抑圧(LTD)の実体と考えられています。しかし個体レベルの記憶・学習が、果たしてシナプスレベルのLTDと因果関係があるのかどうかは十分にわかっていませんでした。このNeuron論文では、光照射によってLTDを制御できる新しい光遺伝学的ツールPhotonSABERを用いることにより、小脳平行線維ープルキンエ細胞間シナプスでのLTDこそが、眼球運動学習に必須であることを直接示すことに成功しました。掛川准教授、松田准教授(電通大)を中心として、加藤准教授(東海大)・深澤教授(福井大)・幸田教授(聖マリ医大)との共同研究の成果です。

小脳神経回路における内在性Nuroligin-1の細胞および細胞下レベルでの局在(Cerebellum)2018.07.26.
Kazuya Nozawa, Ayumi Hayashi, Junko Motohashi, Yukari H. Takeo, Keiko Matsuda, Michisuke Yuzaki.  Cellular and Subcellular Localization of Endogenous Neuroligin-1 in the Cerebellum. Cerebellum in press, 2018.

免疫組織染色に使用できる抗体が無いために、神経細胞のどの部位にNeuroligin-1が局在するのかこれまでよく分かっていませんでした。今回、博士課程1年生の野澤くんは、HAエピトープタグをNeuroligin-1遺伝子に挿入したマウスを用いることにより、抗HA抗体を用いて小脳におけるNeuroligin-1の局在を初めて明らかにしました。マウス作出は林研究員が行いました。

Cbln1投与によるCbln1欠損マウスの失調歩行の改善(Sci Rep)2018.04.18.
Takeuchi E, Ito-Ishida A, Yuzaki M, Yanagihara D.  Improvement of cerebellar
ataxic gait by injecting Cbln1 into the cerebellum of cbln1-null mice. Sci Rep 8:6184, 2018.

Cbln1欠損マウスでは顕著な歩行失調がみられます。成熟後のマウス小脳にCbln1タンパク質を直接注入するとこの失調歩行が改善します。しかし一体どのような歩行なパラメーターが改善するのかはよくわかっていませんでした。本論文では歩行キネマティックスの解析によりこの点を明らかにし、小脳失調による歩行障害の治療を考える上での基礎的な知見をもたらしました。東京大学柳原研の竹内さんのお仕事です。柚崎研の石田さんがCbln1欠損マウスへのCbln1注入実験を行いました。