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Welcome to Yuzaki Lab
    慶應義塾大学医学部柚崎研(神経生理学)では「神経活動や環境の変化が、どのようにして記憶・学習を引き起こし、どのように神経回路網そのものを変化させるのか」というテーマに沿って研究を行っています。詳しくはこちら
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2024

■CPTXは、脊髄損傷モデルマウスに対するiPS移植細胞へのシナプス形成を促進する (Stem Cell Reports) 2024.2.3 Saijo Y, Nagoshi N, Kawai M, Kitagawa T, Suematsu Y, Ozaki M, Shinozaki M, Kohyama J, Shibata S, Takeuchi K, Nakamura M, Yuzaki M, Okano H. Human-induced pluripotent stem cell-derived neural stem/progenitor cell ex vivo gene therapy with synaptic organizer CPTX for spinal cord injury. Stem Cell Reports S2213-6711(24)00010-9, 2024..
ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来の神経幹/前駆細胞(NS/PC)の移植は、脊髄損傷(SCI)モデル動物において有望視されている。運動機能の回復には、移植した神経細胞と宿主神経細胞との間に機能的なシナプス結合を確立することが重要である。本論文では、柚﨑研が開発した人工シナプスコネクターCPTXをhiPSC-NS/PCsにあらかじめ発現させておいてから移植するというex vivo遺伝子治療を開発した。免疫不全トランスジェニックSCIモデルラットを用いて、組織学的および機能的解析を行ったおところ、CPTX発現hiPSC-NS/PCsの移植部位における興奮性シナプスの形成が有意に増加することが明らかになった。また、逆行性単シナプスを追跡したところ、CPTXによって移植ニューロンが周囲の神経路に広範に統合されることが示され、運動機能や脊髄伝導も改善した。本研究は、整形外科西條さん、岡野研との共同研究です。

■DSCAMは、バーグマングリアにおけるGLASTのシナプス周囲への局在を制御してシナプス形成に関与する(Nature Commun)2024.2.3 Dewa KI, Arimura N, Kakegawa W, Itoh M, Adachi T, Miyashita S, Inoue YU, Hizawa K, Hori K, Honjoya N, Yagishita H, Taya S, Miyazaki T, Usui C, Tatsumoto S, Tsuzuki A, Uetake H, Sakai K, Yamakawa K, Sasaki T, Nagai J, Kawaguchi Y, Sone M, Inoue T, Go Y, Ichinohe N, Kaibuchi K, Watanabe M, Koizumi S, Yuzaki M, Hoshino M. Neuronal DSCAM regulates the peri-synaptic localization of GLAST in Bergmann glia for functional synapse formation. Nat Commun. 15:458, 2024..

中枢神経系では、アストロサイトがシナプス間隙からグルタミン酸をクリアランスすることにより、適切なシナプス機能を実現します。しかし、アストロサイトのグルタミン酸トランスポーターGLASTがシナプス周囲でどのように機能しているかは、依然として不明でした。この論文では、プルキンエ細胞に発現する細胞接着分子(DSCAM)が、バーグマングリアに発現するGLASTの局在を制御することによって、登上線維ープルキンエ細胞のシナプス形成と小脳運動学習に関与することを示しました。星野研の出羽さんによる膨大なお仕事です。柚﨑研は掛川が電気生理学的解析と眼球運動学習試験を担当しました。

■生きたマウス脳における内因性神経伝達物質受容体の生体直交化学標識化(PNAS)2024.1.31 Nonaka H, Sakamoto S, Shiraiwa K, Ishikawa M, Tamura T, Okuno K, Kondo T, Kiyonaka S, Susaki EA, Shimizu C, Ueda HR, Kakegawa W, Arai I, Yuzaki M, Hamachi I. Bioorthogonal chemical labeling of endogenous neurotransmitter receptors in living mouse brains. Proc Natl Acad Sci USA. 121:e2313887121, 2024..

遺伝子操作なしにタンパク質を共有結合で化学標識する方法は、受容体を分析するための強力な方法である。しかし、脳における選択的な標的受容体標識はまだ確立していない。京大・浜地研の野中さんが主導して行った本研究では、リガンド指向性化学反応を用いて、生きたマウスの脳内で合成プローブを標的内因性受容体に選択的に結合させることができることを示した。柚﨑研の掛川、荒井はCRESTとERATOでの共同研究の一環として、本研究において化学標識によって受容体の機能が変化しないことを示した。

■抑制性シナプスにおけるGluD1のもう一つの隠された顔(Cell Research)2024.1.24 Masayuki Itoh, Michisuke Yuzaki. The hidden face of GluD1 at inhibitory synapses. Cell Res. 2024 Jan 23.

δ型グルタミン酸受容体(GluD1とGluD2)はイオンチャネル型グルタミン酸受容体に属するものの、グルタミン酸と結合しないことから長年孤児受容体と呼ばれてきた。GluD2は興奮性シナプスにおいて、①シナプス前部から放出されるCbln1と結合してシナプス形成と維持を制御する、②グリアが放出するD-Serに結合してシナプス可塑性LTDを誘導する、という働きを示すことが分かっていた。面白いことに、GluD1は抑制性シナプスにおいて、①シナプス前部から放出されるCbln4と結合してシナプス形成と維持を制御する。しかしGluD1がシナプス可塑性を制御するのかは不明であった。今回、Piotらによって、GluD1は、②GABAと結合して抑制性シナプスLTPを制御することが示された。この総説では、この論文を紹介するとともに残された課題についてまとめた。