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Welcome to Yuzaki Lab
    慶應義塾大学医学部柚崎研(神経生理学)では「神経活動や環境の変化が、どのようにして記憶・学習を引き起こし、どのように神経回路網そのものを変化させるのか」というテーマに沿って研究を行っています。詳しくはこちら
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2022

■組織固定によって駆動される新しい小分子の可視化法(Chem)2022.12.13

Nonaka H, Mino T, Sakamoto S, Oh JH, Watanabe Y, Ishikawa M, Tsushima A, Amaike K, Kiyonaka S, Tamura T, Aricescu AR, Kakegawa W, Miura E, Yuzaki M, Hamachi I. Revisiting PFA-mediated tissue fixation chemistry: FixEL enables trapping of small molecules in the brain to visualize their distribution changes. Chem 9:523-540, 2023. doi.org/10.1016/j.chempr.2022.11.005
成体に投与された小分子が、脳のどの部位にどのように分布しているのかをスナップショットのように可視化する新しい技術として、組織固定でよく使われるパラホルムアルデヒドによって小分子を固定化方法を開発しました。本方法によって、代謝型グルタミン酸受容体mGlu1、AMPA型グルタミン酸受容体、ドーパミン受容体のそれぞれのリガンド投与後の局在様式を可視化することに成功しました。本研究はERATO/CRESTの支援を受けた京都大学浜地研、名古屋大学清中研との共同研究です。

■補体C3-補体因子D-C3a受容体シグナルは、右心不全の心臓リモデリングを制御する(Nature commun)2022.9.15

Ito S, Hashimoto H, Yamakawa H, Kusumoto D, Akiba Y, Nakamura T, Momoi M, Komuro J, Katsuki T, Kimura M, Kishino Y, Kashimura S, Kunitomi A, Lachmann M, Shimojima M, Yozu G, Motoda C, Seki T, Yamamoto T, Shinya Y, Hiraide T, Kataoka M, Kawakami T, Suzuki K, Ito K, Yada H, Abe M, Osaka M, Tsuru H, Yoshida M, Sakimura K, Fukumoto Y, Yuzaki M, Fukuda K, Yuasa S. The complement C3-complement factor D-C3a receptor signalling axis regulates cardiac remodelling in right ventricular failure. Nat Commun. 13:5409, 2022.
右心不全は、あらゆるタイプの心不全において重要な役割を担っていますが、そのメカニズムは未だ不明であり特異的な治療法もありません。この論文では、循環器内科の湯浅博士らのグループによってCfdやC3aR1などの代替補体経路関連が右心不全の発症を制御することを初めて明らかにしました。柚﨑研(鈴木君)は、新潟大学﨑村研究室とともにコンディショナル補体3(C3)ノックアウトマウスを作出し、この仮説の検証に貢献しました。

■標本を『膨らませる』ことで見えた脳内のナノの世界(Neuron)2022.8.25

Nozawa K, Sogabe T, Hayashi A, Motohashi J, Miura E, Arai I, Yuzaki M*. In vivo nanoscopic landscape of neurexin ligands underlying anterograde synapse specification. Neuron 110:3168-3185, 2022.
高分解能の顕微鏡技術であるExpansion Microscopy(ExM)を改良して、脳内のシナプスの個性を決める働きを持つ分子群のナノレベル(1 ミリメートルの100万分の1が1ナノメートル:nm)の構造を明らかにしました。
脳の働きの元となる神経回路網は、神経細胞どうしがシナプスによって互いにつながって作られます。シナプスをつなぐさまざまな分子は、シナプスの中でも約100~1000 nmの狭い領域に密集しているため、従来の光学顕微鏡の分解能(約200 nm)ではその詳細な分布は観察できません。そこで、今回、標本そのものを約1000倍の体積に膨張させる技術ExMをさらに改良し、シナプス観察に最適化することによって、マウス神経回路網において興奮性シナプスをつなぐ分子群の構造や相互関係をナノレベルで初めて明らかにすることに成功しました。とりわけ、ニューレキシンに結合するシナプス分子群(ニューレキシンリガンド)が、シナプス内でそれぞれ数十 nmの「ナノドメイン」を単位として集積することを発見しました。さらに、シナプス前部に存在するニューレキシンの種類によって、シナプス後部のシナプス分子やグルタミン酸受容体のナノドメインの配置が決定されることがわかりました。
今回の研究成果から、脳の働きを支えるシナプスの個性は、それぞれに特化したシナプス分子がナノレベルで相互作用することによって作られることがわかりました。これらの分子群は多くの精神疾患や神経発達症との関連が報告されていることから、本研究の成果はこれらの疾患の病態や正常な神経回路の発達機構の理解につながることが期待されます。

■Gタンパク質共役型受容体を化学的に活性化する(Nat Commun)2022.6.16

Ojima K, Kakegawa W, Yamasaki T, Miura Y, Itoh M, Michibata Y, Kubota R, Doura T, Miura E, Nonaka H, Mizuno S, Takahashi S, Yuzaki M*, Hamachi I*, Kiyonaka S* Coordination chemogenetics for activation of GPCR-type glutamate receptors in brain tissue. Nat Commun 13: 3167 (2022).
脳内の神経回路の働きを理解するために、記憶・学習を司る神経伝達物質受容体であるグルタミン酸受容体を細胞種選択的に活性化する技術が必要とされています。本研究では、本来のグルタミン酸応答能を維持したままで、人工化合物によって活性化される変異グルタミン酸受容体を開発しました。実際にこの変異グルタミン酸受容体をある特定の細胞種に発現させたマウスを作製し、人工化合物投与によって細胞種選択的にグルタミン酸受容体を活性化させることを示しました。この新技術「配位ケモジェネティクス法」を用いることにより神経回路の理解が加速すると期待されます。本研究は名古屋大学清中研、京都大学大学浜地研との共同研究です。