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Welcome to Yuzaki Lab
    慶應義塾大学医学部柚崎研(神経生理学)では「神経活動や環境の変化が、どのようにして記憶・学習を引き起こし、どのように神経回路網そのものを変化させるのか」というテーマに沿って研究を行っています。詳しくはこちら
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2017

中枢神経系における2種類の分泌型シナプス形成分子(Annu Rev Physiol)2017.12.18.
Yuzaki M.  Two classes of secreted synaptic organizers in the central nervous system. Annu Rev Physiol 2017, in press.

中枢神経系では約1000億個の神経細胞が約1000兆個のシナプスを介してお互いに配線されています。この配線を司る分子が「シナプス形成分子(シナプスオーガナイザー)」と呼ばれます。シナプスは過剰に生産されたあとに、発達期に不要なシナプスは刈り込まれます。また生涯にわたってシナプス形成・刈り込み現象が起きることも知られています。このようなシナプス形成・刈り込み・維持機構の異常が多くの精神疾患や発達障害患者の原因となることが分かってきました。本総説では、近年明らかになった分泌型シナプス形成分子について概括するとともに、将来の研究の方向性について考察を加えました。

プルキンエ細胞のシナプスがバーグマングリアできちんと被われるためにはグルタミン酸輸送体が必要(PNAS)2017.4.8
Miyazaki T, Yamasaki M, Hashimoto K, Kohda K, Yuzaki M, Shimamoto K, Tanaka K,Kano M, Watanabe M. Glutamate transporter GLAST controls synaptic wrapping by Bergmann glia and ensures proper wiring of Purkinje cells. Proc Natl Acad Sci USA. 114:7438-7443, 2017.

成熟後の小脳では一個のプルキンエ細胞は一本の登上線維によってのみ入力信号を受けることが知られています。本研究では、この過程にグルタミン酸輸送体の機能が必須であることを明らかにしました。北大の宮崎さんと渡辺教授による研究成果です。柚崎研ではウイルスベクターを用いたプルキンエ細胞への遺伝子導入法において共同研究しました。

ヒトES細胞に単一の転写因子を導入することによって神経細胞に分化誘導できる(BBRC)2017.4.8
Matsushita M, Nakatake Y, Arai I, Ibata K, Kohda K, Goparaju SK, Murakami M, Sakota M, Chikazawa-Nohtomi N, Ko SBH, Kanai T, Yuzaki M, Ko MSH. Neural differentiation of human embryonic stem cells induced by the transgene-mediated
overexpression of single transcription factors. Biochem Biophys Res Commun. 490:296-301, 2017.

システム医学講座の松下さんと洪教授による研究成果です。柚崎研では分化させた神経細胞の機能をCaイメージングおよび電気生理学で明らかにしました。

三叉神経節V1におけるTrpM8, TrpV1チャネル間の相互作用と片頭痛病態との関係(Cephalalgia)2017.4.8
Kayama Y, Shibata M, Takizawa T, Ibata K, Shimizu T, Ebine T, Toriumi H, Yuzaki M, Suzuki N. Functional interactions between transient receptor potential M8 and transient receptor potential V1 in the trigeminal system: Relevance to migraine pathophysiology. Cephalalgia. 1:333102417712719, 2017.

神経内科の柴田講師、鈴木教授による研究成果です。柚崎研ではCaイメージングをお手伝いしました。

新しい化学プローブによる内因性AMPA受容体の可視化法(Nature Commun)2017.4.8
Wakayama S, Kiyonaka S, Arai I, Kakegawa W, Matsuda S, Ibata K, Nemoto YL, Kusumi A, Yuzaki M, Hamachi I. Chemical labelling for visualizing native AMPA receptors in live neurons. Nat Commun. 8:14850, 2017.
Nature Commun 8: 14850, 2017.

私たちの脳では興奮性神経伝達はグルタミン酸によって担われており、とりわけAMPA型グルタミン酸受容体は速い神経伝達を伝える重要な受容体です。シナプス後部におけるAMPA受容体の数が長期的に変化することこそが、記憶の最も基礎的な過程と考えられています。これまでAMPA受容体の数の変化については、固定標本において抗体染色によって行うか、あるいは蛍光プローブをつけた外来性AMPA受容体を発現させることによって研究されてきました。本研究では、全く新しい化学ラベル化法を開発することによって、脳内における内因性AMPA受容体を可視化し、その変化を経時的に観察することに成功しました。本成果はJST CRESTの支援を受けて行われた京大浜地研と柚﨑研による共同研究の成果です。

MTCL1は微小管安定化を介してプルキンエ細胞の初節の維持と機能発現を制御する(EMBO J)2017.3.14
Satake T, Yamashita K, Hayashi K, Miyatake S, Tamura-Nakano M, Doi H, Furuta Y, Shioi G, Miura E, Takeo YH, Yoshida K, Yahikozawa H, Matsumoto N, Yuzaki M, Suzuki S. MTCL1 plays an essential role in maintaining Purkinje neuron axon initial segment. EMBO J 36:1227-1242, 2017.

軸索初節(AIS)は活動電位を発生する部位であり、ankyrin Gによって形成が制御されます。しかしankyrin Gがどのように集積するのかはよく分かっていませんでした。この研究では微小管架橋分子MTCL1がAISの形成と維持に必須の役割を果たすことを明らかにしました。横浜市大の佐竹さんと鈴木教授の研究です。柚崎研では子宮内電気穿孔法や組織解析にて共同研究しました。

補体ファミリ分子によるシナプス形成ー「補う」ばかりではない(Curr Opin Neurobiol)2017.2.20
Yuzaki M. The C1q complement family of synaptic organizers: not just complementary. Curr Opin Neurobiol 45:9-15, 2017.

Cbln1は孤児受容体デルタ型グルタミン酸受容体のリガンドとして発見されました。その後、C1qや、C1q-like(C1qL)など、「補体」ファミリーに属する分子群がシナプス形成・維持・除去などのさまざまな過程に必須の役割を果たすことが分かってきています。本invited reviewでは、ヒト疾患との関連も含めて現在の研究の現状を概説しました。

mRNA導入によるiPS細胞から運動ニューロンへの急速分化法(Scientific Reports)2017.2.13
Goparaju S, Kohda K, Ibata K, Soma A, Nakatake Y, Akiyama T, Wakabayashi S, Matsushita M, Sakota M, Kimura H, Yuzaki M, Ko SBH, Ko M. Rapid differentiation of human pluripotent stem cells into functional motor neurons by mRNAs encoding transcription factors. Scientific Reports  13;7:42367, 2017.

転写因子をコードするmRNAを導入することによって、iPS細胞から運動ニューロンに効率よくかつ急速に分化させる方法の報告です。システム医学講座の洪先生との共同研究成果の論文です。日経新聞などにも取り上げられました。

デルタ受容体の成人の日(Trends Neurosci)2017.1.20
Yuzaki M, Aricescu AR. A GluD Coming-Of-Age Story. Trends Neurosci 40:138–150, 2017.

三品らとSeeburgらによって1993年にcloningされて以来、長らく孤児受容体として作動原理が不明であったデルタ型グルタミン酸受容体(GluD)についての、近年の進歩をまとめたinvited review論文です。