2026
■CBLN1遺伝子変異で起きる家族性小脳失調症とAAVによる分子治療 (Molecular Therapy) 2026.8.15 2. Yamasak T, Kakegawa W, Hayashi A, Ogawa N, Takano T, Matsuda K, Takatsuto K, Abdel-Hamid MS, Zaki MS, Gleeson J, Yuzaki M*. AAV-mediated CBLN1 replacement rescues hereditary ataxia caused by biallelic CBLN1. Molecular Therapy. accepted. 本研究では、CBLN1の点変異でおきる潜性遺伝の小脳失調症2家系を報告し、そのマウスモデルを作出することによって病態と分子機構を明らかにしました。さらにアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてグリア細胞にCBLN1を発現させることによって、既に小脳失調を発症している成獣においても小脳シナプスを回復させ失調症状を寛解させることを示しました。
■Tmem178はシナプス前部の2大ハブタンパク質NeurexinとPTPRとをつなぐ (Nature Commun) 2026.8.15 Thivaios S, Schwenk J, Brechet A, Boudkkazi S, Sethumadhavan N, Henneken P, Miura E, Hayashi A, Kocylowski MK, Haupt A, Kaminski D, Schreiner D, Nowacka A, van den Broucke J-B, Kulik A, Schulte U, Sterky FH, Yuzaki M, Scheiffele P, Fakler B*. Ternary Neurexin-T178-PTPR complexes represent a presynaptic core-module of neuronal synapse organization. Nature Commun. accepted. 本研究では、神経細胞どうしの接点であるシナプス前部においてさまざまなタンパク質を集積させ、シナプス形成・分化を制御する「ハブタンパク質」ニューレキシン(Nrx)に着目し、Nrxに結合するタンパク質を免疫沈降後の質量分析によって網羅的に同定しました。同定された膜タンパク質のうち、Tmem178 (T178)は、Nrxと同時に受容体型チロシン脱リン酸化酵素(PTPR)に結合することが分かりました。これまでシナプス前部でハブとしてシナプス形成・成熟を制御するハブタンパク質として、NrxとPTPRが知られていましたが、これらの分子がどのように協調して働くのかは謎でした。Tmem178こそが、Nrx-T178-PTPRという三者複合体形成によって、この2つのハブタンパク質を繋ぐ役割を果たすことを明らかにしました。柚﨑研では、免疫沈降や免疫染色の特異性を高めるために、林さんが各種エピトープタグノックインマウスの作成、そして三浦さんがこれらのノックインマウスを用いてTmem178の局在解析を行いました。
■神経細胞どうしをつなぐタンパク質「ニューロリギン」の新しい性質を明らかに (Biochem Biophys Res Commun) 2026.6.25 Uto Y, Yokoo T, Yuzaki M, Tsumoto K, Nakakido M. Mass photometry analysis revealed monomer-dimer equilibrium of the synaptic adhesion molecule neuroligin. Biochem Biophys Res Commun. 2026 Jun 25;819:153830. doi: 10.1016/j.bbrc.2026.153830. Epub 2026 Apr 22. PMID: 42033941. 本研究では、神経細胞どうしの接点であるシナプスの形成に重要なタンパク質「ニューロリギン」に着目しました。ニューロリギンは、2つの分子が組み合わさった二量体として働くと考えられてきましたが、その結合がどの程度安定なのかは十分に分かっていませんでした。そこで質量フォトメトリーという新しい計測技術を用いて、ヒトのニューロリギン1、2、3を詳しく解析しました。その結果、ニューロリギンは常に二量体として存在するのではなく、濃度に応じて1つの分子の状態と2つの分子が結合した状態の間を動的に行き来していることが明らかになりました。また、ニューロリギンの種類によって二量体の作りやすさが異なり、ニューロリギン3が最も強く二量体を形成し、次いでニューロリギン2、ニューロリギン1の順であることが分かりました。この成果は、シナプスがどのように形成・成熟するのかを理解するための新しい手がかりとなるものです。東大津本研・中木戸研の大学院生宇都くんの研究論文です。